啓発活動や運動プログラムの配信を通して、認知症の予防という社会課題に積極的に取り組んでいく。
認知症の「ケア」から「予防」に力を入れ始める
業界ではまだ遅れている「予防」の観点
介護の中でも「認知症ケア」はこれまで業界全体で取り組んでいますが、認知症の「予防」に関してはまだそこまで注目されていません。ただ期待される分野であることは間違いなく、ヘルスケア事業としてさまざまな企業が関心を示しており、介護業界でも、これから広がっていくことは間違いないでしょう。
認知症のメカニズムはまだ完全に解明されていませんが、多くの研究から、運動や生活習慣が影響することは分かってきました。また認知症の前段階である「MCI(軽度認知障害)」の状態で介入すれば、改善の可能性も高まるとされており、介護に関わるわれわれが早期にMCIのサイン・予兆を見つけて生活習慣の改善など適切にサポートすることができれば、大きな効果が期待できるのです。
予防分野における新事業の立ち上げ
予防分野のサービスは、これからの事業の展開が待たれるものの、参入においては決して簡単な分野ではありません。認知症は誰が、どのように発症するかがはっきりと分かっていないため、予防のニーズは表だって出にくく潜在化しており、まずそのニーズを掘り起こすところから始めなければならないのです。
私たち認知症プロジェクト推進部は、「世界に誇れる豊かな長寿国日本」を目指して、この難しい分野にチャレンジしました。アクティブシニアから要介護の方まで幅広い層を対象に、予防サービスとして「SOMPOスマイル・エイジングプログラム」の提供を始めたのです。
新規顧客の開拓やサービス提供体制の整備など、一からビジネスモデルを作り上げていくことになるため、SOMPOケアにとっても新しい挑戦になります。

オンラインでの予防サービスの提供開始
SOMPOスマイル・エイジングプログラムの開発
『SOMPOスマイル・エイジングプログラム』は、脳と身体の健康を維持するサービスとして開発しました。海外で行われた認知機能の予防に関する研究を基に、国立長寿医療研究センターの監修を受けた科学的な根拠のあるプログラムです。参加者が楽しみながら続けることができ、予防の効果も出せるような仕組みを取り入れています。定期的に評価を行っているのも、他社には無いスタイルです。
開発の段階では、ニーズや市場の調査・収支バランスなど踏まえてビジネスモデルを探りました。コロナ禍の影響もあって、オンライン配信にたどり着いたのですが、他にも(株)ルネサンスが開発したシナプソロジーを取り入れたり、他社が行っているオンラインサービスとの差別化をしたりするなど、さまざまな改善を経て今に至っています。
2021年から当社の介護事業所へ展開を開始すると共に、2022年よりアクティブニシアの方へもサービスを開始することができました。お客さまから「身体の調子が良くなった」等の声を頂くことも増えており、プログラムに対する手応えを感じています。

プログラムの改善と、そこから生まれたライブ配信へのこだわり
これから広げていくプログラムですが、開発では試行錯誤の連続で苦労しました。実際にサービス提供してみると、想像もしなかった課題がたくさん出てきたのです。
例えばオンライン配信では、画面や音声の流し方だけではなく、受信する側の環境やITへの慣れも考えて構成を作る必要がありました。また参加者は「積極的にやりたい」「無理せずゆっくりやりたい」「難しいならやりたくない」などさまざまなニーズがあると分かり、どのニーズに合わせるべきか、リサーチと検討を繰り返すこともありました。こうした課題に対し、常に「誰に、何を提供するのか」という本質に立ち返りながら議論を重ね、改善を加えていったのです。
また介護に関するオンラインのアクティビティは数多く存在しますが、私たちが特にこだわったのがライブ配信です。継続的に取り組んでいただくためには「楽しさ」が欠かせないことから、発信者と参加者が双方向でつながることで連帯感が生まれるライブ配信は最適です。もちろんちょっとしたミスやアクシデントもつきものですが、それもライブならではの面白さになるのです。
いかに参加者に楽しいと思ってもらえるか、満足度を高めてもらえるか、トライアル&エラーを繰り返しながらライブ配信と双方向性の向上を目指しています。

事業の収益化も視野に入れながら社会課題に取り組む
グループ全体で横断的に取組み
認知症のある方の言動や考え方が分かりにくいという声をよく聞きます。しかし、認知症の症状をあらかじめ理解し、その状態が分かれば、適切な対応が可能です。SOMPOケアでは、認知症応援プロジェクト「Orange+」を立ち上げ、認知症の正しい理解や支援を啓発したり、当事者が安心して暮らせるような環境の整備を行ったり、介護の現場では、認知症を抱えたご利用者さまそれぞれの症状に合わせたカスタムメイドな対応をするように努めています。
また認知症がある方への支援だけではなく、認知症の予防やご家族への支援も大切です。SOMPOグループ全体でも、「MCIや認知症を保障する保険」の提案や「介護・認知症に関する情報サイト」の運営、毎年9月のアルツハイマー月間でセミナーなどの啓発活動を行うなど、認知症にさまざまなアングルから向き合っています。このような認知症に対する全社横断的な対応は、業界ではSOMPOグループ独自の取組みといえるでしょう。認知症は誰が発症してもおかしくありません。脳と身体の健康を維持するために、業種を超えてグループ全体で何ができるのか、避けることができない課題です。

将来的にはソリューション提供も
グループ横断で認知症のサポートを行う中、『SOMPOスマイル・エイジングプログラム』もその一翼を担えることを目指しています。
今後の目標は、収益性のある事業として確立させることです。そのためには、一人ひとりのお客さまに良いサービスを提供すると共に、強いビジネスモデルを打ち立てる必要があるでしょう。展開先においても、個人に対するBtoCだけではなく、他社へのソリューション提供といったBtoB、自治体に向けたBtoGなどさまざまなケースを開拓しています。
収益化できる事業へ成長させ、高齢者一人ひとりの健康寿命を延ばし、その先にある日本の社会課題解決に貢献したいと考えています。
難しいチャレンジを楽しみながら、チームのメンバーと共に挑戦し続けます。
